[アスパラインゲン]
我を愛する歌
(P.24)
かなしきは
飽くなき利己の一念を
持てあましたる男にありけり
手も足も
室いつぱいに投げ出して
やがて静かに起きかへるかな
<ルビ>室=へや。
(P.25)
百年の長き眠りの覚めしごと
呿呻してまし
思ふことなしに
腕拱みて
このごろ思ふ
大いなる敵目の前に躍り出でよと
<ルビ>百年=ももとせ。呿呻=あくび。腕拱みて=うでくみて。
《つぶやき》
静かに思索し静かに闘いの炎を燃やし静かの心でいたいから、男は狭い畳の部屋でのたうちまわる。