〖 啄木の息 〗

石川啄木の魅力を追い 息づかいに触れてみたい

望月善次〈『あこがれ』石川啄木〉6


[キツツキ 啄木鳥]


〈音読・現代語訳『あこがれ』石川啄木〉6 望月善次 啄木鳥

霊の住み処であるこの森にも巷の塵は押し寄せようとしています。啄木鳥はそれを守るべく霊妙な務めをしているのです。

啄木鳥(たくぼくどり)

いにしへ聖者(せいじや)が雅典(アデン)の森(もり)に撞(つ)きし、
光(ひかり)ぞ絶(た)えせぬ天生(てんせい)『愛(あい)』の火(ひ)もて
鋳(ゐ)にたる巨鐘(おほがね)、無窮((むきゅう)のその声(こえ)をぞ
染(そ)めなす『緑(みどり)』よ、げにこそ霊(れい)の住家(すみか)。


〔現代語訳〕
  啄木鳥
昔の聖者(プラトン)がアデン(ギリシャ)の森で撞いた、
光が絶えない天然に生じたの『愛』の火で
鋳造した巨大な鐘、尽きること無いその声を
染め上げた『緑』よ、本当に(ここが)霊の住家です。


(2010-07-22 盛岡タイムス)

    • 盛岡タイムス連載は、毎週木曜日と日曜日を予定。