〖 啄木の息 〗

石川啄木の魅力を追い 息づかいに触れてみたい

石川啄木 著(P.16〜17)草に臥て

[ゼニゴケ 雌株(破れ傘)]


我を愛する歌


(P.16)


   草に臥て
   おもふことなし
   わが額に糞して鳥は空に遊べり


   わが髭の
   下向く癖がいきどほろし
   このごろ憎き男に似たれば


<ルビ>臥て=ねて。額に糞して=ぬかにふんして。髭=ひげ。


(P.17)


   森の奥より銃声聞ゆ
   あはれあはれ
   自ら死ぬる音のよろしさ


   大木の幹に耳あて
   小半日
   堅き皮をばむしりてありき


<ルビ>聞ゆ=きこゆ。自ら=みづから。小半日=こはんにち。