〖 啄木の息 〗

石川啄木の魅力を追い 息づかいに触れてみたい

石川啄木 著(P.1)序文


[レッドクローバー]

砂の握一

著木啄川石

版堂雲東


『一握の砂』石川啄木 著(P.1)序文 藪野椋十


(P.(1))

世の中には途法も無い仁もあるものぢや,歌集の序を書けとある,
人もあらうに此の俺に新派の歌集の序を書けとぢや。ああでも
無い,かうでも無い,とひねつた末が此んなことに立至るのぢやら
う。此の途法も無い處が即ち新の新たる極意かも知れん。
定めしひねくれた歌を詠んであるぢやらうと思ひながら手當り
次第に繰り展げた處が,
 
  高きより飛び下りるごとき心もて
  この一生を
  終るすべなきか
 
此ア面白い,ふン此の刹那の心を常住に持することが出來たら,至
極ぢや。面白い處に氣が着いたものぢや,面白く言ひまはしたも
のぢや。