新聞書評

著者 山下多恵子
国際啄木学会理事。日本ペンクラブ会員。日本近代文学会会員。
著書『海の蠍』『忘れな草』『裸足の女』『啄木と郁雨』『あふれる』『かなしき時は君を思へり』 他

〈 あとがき 〉より
・塔和子という詩人がいます。
・13歳でハンセン病療養所に入所し、83歳で亡くなるまで、70年間をそこで過ごしました。
胸の泉に
塔和子
かかわらなければ
この愛しさを知るすべはなかった
この親しさは湧かなかった
この大らかな依存の安らいは得られなかった
この甘い思いや
さびしい思いも知らなかった
人はかかわることからさまざまな思いを知る
(中略)
ああ
何億の人がいようとも
かかわらなければ路傍の人
私の胸の泉に
枯れ葉いちまいも
落としてはくれない
(『未知なる知者よ』海風社、1988年6月)
・「かかわり」を絶たれて生きてきた塔和子が、「かかわりの素晴らしさ」をテーマとした詩を書いたことに、感動を覚えます。
・人は人と出会い、関係を持つから、泉に落ちた枯れ葉が水面に波紋を広げるように、それぞれの中で様々な感情が生まれ、そこに愛や友情も芽生えるのです。