〖 啄木の息 〗

石川啄木の魅力を追い 息づかいに触れてみたい

「電話附の家にも住んでみたい 渋民の子供等を呼んで勉強さしたい」 眠れない夜の啄木

紅葉

『文豪の悪態  皮肉・怒り・嘆きのスゴイ語彙力』 山口謠司 著

「犬が轢かれて生々しい血! 血まぶれの頭! ああ助かった!」明治42年3月30日)

   石川啄木の日記からーーー

 

[文豪の語彙]

 貧乏のどん底にいた啄木は、たびたび眠れない夜を送り、自殺を考えている。

 

明治41年(1908年)6月15日

 金を欲しい日であった。此間太平洋画会で見た吉田氏の(魔法)、(スフィンクスの夜)、(赤帆)などを買いたい。本も買いたい。電話附の家にも住んでみたい。そして、吉野君岩崎君を初め、小樽の高田や藤田、渋民の子供等を呼んで勉強さしたい。…………
 夜は3時打つまで眠れなかった。

 

明治41年6月27日

(前略)
 臆(ああ)、死のうか、田舎にかくれようか、はたまたモット苦闘をつづけようか? この夜の思いはこれであった。何日になったら自分は、心安く其日一日を送ることが出来るのであろう。安き一日 !?
(中略)
 誰か知らぬまに殺してくれぬであろうか! 寝てる間に!

 

 

『文豪の悪態  皮肉・怒り・嘆きのスゴイ語彙力』

著者 山口謠司

朝日新聞出版 2020年

定価 1650円(税込)