正平調
- 「銀河鉄道の夜」で、学校を終えたジョバンニが向かうのは印刷所だ。そこで指示通りに、ピンセットであわ粒ほどの小さな活字を拾って箱に並べていく。文選工と呼ばれた仕事である。
- 昭和から平成になるころだったか文選工泣かせの歌人について書いた短文を読んだ。原稿を手に活字を拾うのだが、ついほろっとさせられ視界がかすみ、拾い間違えてしまう。誤植の多い歌人、それは石川啄木。
- 職場の人間関係、ふるさとの思い出と友情、闘病、そして終生苦しんだ金銭の悩み。思ったこと感じたことを、つぶやくようにどんどん歌にした。喜びあり悲しみあり。読み手の置かれた状況に応じて、どれかが心に響く不思議な歌人だ。
- 啄木の歌より。〈新しき明日の来(きた)るを信ずといふ自分の言葉に嘘(うそ)はなけれど-〉。
- きょうメーデー。
(2023-05-01 神戸新聞)