〖 啄木の息 〗

石川啄木の魅力を追い 息づかいに触れてみたい

あの頃の啄木はちょうど夢から覚めつつある時期 カドブン対談

ヤマユリ

特別公開対談! 『黒牢城』で直木賞受賞の米澤穂信が宮内悠介と〈時代×ミステリ〉を語る

(前略)

宮内:パンの会が好きになったのは、ひとつは詩の研究をしている妻の啓蒙によるものですが、もうひとつは、この会が自然主義とは一線を画して純粋に美を追い求め、ヨーロッパの美術運動を真似てサロン的なことをやろうとして、洋食屋をカフェに見立てたり、隅田川セーヌ川に見立てたりと、ある種の可愛らしさのようなものもありまして。そして、参加している人たちがまだ何者でもない。世に出るかでないかの頃の人たちのパワーみたいなものはやはり好きです。

米澤:ラファエル前派にも似た熱さを感じます。作中、石川啄木が登場するのもいいですね。石川は生活のために芸術に触れているから、本質的にはパンの会に加担できない。単に売れなきゃ意味がないというような薄っぺらい現実論ではないところで、芸術をお金に換える術も必要だという視点が持ち込まれるのも好きでした。

宮内:あの頃の啄木は就職して、ちょうど夢から覚めつつある時期なのですよね。

(後略)

(2022-07-01 KADOKAWA文芸WEBマガジン)

 

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