〖 啄木の息 〗

石川啄木の魅力を追い 息づかいに触れてみたい

思いつめ 息をつめ 希望に燃え 啄木は生きることを急いだ

クスノキ

大人の休日倶楽部 2022年5月号

文人鉄道

特集関連の旅 鉄路が生んだ文学の旅へ

 石川啄木✖️日本鉄道

高揚も傷心も鉄路に乗せて

「汽車の旅/とある野中の停車場の/夏草の香のなつかしかりき」(『一握の砂』)

  • 東北と首都とをまっすぐ繋ぐ鉄路が生まれたのは明治24(1891)年だった。日本初の民営鉄道会社・日本鉄道の上野ー青森間の全線開通である。夭折の歌人石川啄木が5歳のときだ。ふるさと岩手県渋民村(現・盛岡市)の近くに好摩駅も同時に開業。神童と呼ばれた少年の胸をときめかせたこの鉄路は、やがて文人の旅の移動手段となった。

短い生涯の中で啄木は、ふるさと渋民から離れ、5回上京している。

  • 東京で詩や短歌の作品を精力的に量産したが、26年の生命は尽き、下りの日本鉄道に乗って帰郷することはついになかった。

「何事も思ふことなく/日一日/汽車のひびきに心まかせぬ」(『一握の砂』)

  • 残りの短い時間を知っていたのか、啄木は生きることを急いでいた。思いつめ、息をつめ、希望に燃え、傷つき、それらを繰り返す若者を、励ますように慰めるように列車はふるさとと東京を往復した。(取材・文 植松二郎)

 

目次 (大人の休日倶楽部 2022年5月号)


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大人の休日倶楽部

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動画 石川啄木✖️日本鉄道 石川啄木記念館など