正平調
- 直後に出た市の広報には、石川啄木の歌をもじって記す。「ふるさとの海にむかいていうことなし」。55年に満たない生涯の晩年には、しきりに古里への思いを語った。
- 桐郎の歩みを振り返ると、相生への感情は単純ではなかったろうと思う。生母は彼を産んですぐに亡くなる。造船所に勤めた父も後年、自宅近くの崖から飛び降り命を絶つ。それでも湧き出る思慕は熱く切ない。
- 長引くコロナ禍で、自死する人が増えている。事情はさまざまで軽々なことは言えないが、桐郎のメッセージが力を持たないだろうか。
(2021-02-08 神戸新聞)