〖 啄木の息 〗

石川啄木の魅力を追い 息づかいに触れてみたい

浦山桐郎のメッセージが力を持たないだろうか…

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ウメ

正平調

  • ちょうど40年前の2月、映画監督の浦山桐郎が初めて故郷・相生で講演した。相生市民会館を埋めた聴衆を前に、やにわに黒板に向かって海岸部の地図を描き宣言した。「相生湾は母なる子宮です」
  • 直後に出た市の広報には、石川啄木の歌をもじって記す。「ふるさとの海にむかいていうことなし」。55年に満たない生涯の晩年には、しきりに古里への思いを語った。
  • 桐郎の歩みを振り返ると、相生への感情は単純ではなかったろうと思う。生母は彼を産んですぐに亡くなる。造船所に勤めた父も後年、自宅近くの崖から飛び降り命を絶つ。それでも湧き出る思慕は熱く切ない。
  • 長引くコロナ禍で、自死する人が増えている。事情はさまざまで軽々なことは言えないが、桐郎のメッセージが力を持たないだろうか。

(2021-02-08 神戸新聞

 

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