ザ・インタビュー「日々を丁寧に生きるための短歌教室①」
辻 仁成 作家 パリ
辻 実は、ぼく、短歌の本を一冊丸ごと読んだのは初めてなんです。函館に住んでいたことがあるので石川啄木の短歌は暗唱できるくらいなのですが、正岡子規にしても、与謝野晶子にしても、名前は知っていても学校で習ったくらいで、短歌だけずっと素通りをしていたという。
それで、今回初めて俵さんの「未来のサイズ」という本を一冊完読して、衝撃的な面白さでした。
○ 今日のザ・インタビュー。歌人、俵 万智に迫ります。
辻 僕は函館にいたので石川啄木が好きでしたが、俵さんが好きな歌人は?
俵 啄木とも仲の良かった若山牧水は大好きですね。
「白鳥は哀しからずや空のあを海の青にも染まずただよふ」
辻 啄木にちょっと似てますよね。
俵 あまり知られてませんが、啄木が亡くなった時、家族以外にその場にいたのは牧水だけだったんです。それくらい親しい仲でした。
辻 僕は函館で思春期を過ごしたので、石川啄木から受けた影響は割とあって、啄木は函館に4ヶ月しかいなかったのに、函館の良いところをいっぱい歌っている。僕もそういう風に函館を書きたかったんです。
俵 啄木は本当は小説を書きたかったんですよ。小説をなんとか書きたいと思っていたけれど、うまくいかず、短歌のことはまあまあ軽んじてるっていうか、肩の力が抜けていたとも言えます。今日も屁なぶってやったって感じ。それであんないい歌ができたんですから、皮肉なものですね。
(2020-11-15 designstories THE INTERVIEWS)