くねくねTANKAロード
ふるさとの訛なつかし 石川啄木
古典音痴の私が歌碑や句碑を巡り、くねくね遠回りしながら歌のヒントを探すエッセー。今回訪れたのは、東京・上野駅にある石川啄木の歌碑だ。
〈ふるさとの訛なつかし/停車場の人ごみの中に/そを聴きにゆく〉
- ふるさとの東北なまりがなつかしくて、上野駅の人混みの中にそれを聴きに行くという。以前、箱根で乗ったロープウェイの中で、台湾か中国から旅行に来たお婆さんと孫の話し声を聴いた。初めて耳にする独特の発音はおっとりと柔らかくて、一度もそこに行ったことがないのに不思議となつかしさを感じた。
- もしかすると啄木にとっての「停車場」も、行き交う人々のドラマを鑑賞し、ノスタルジーを感じられる映画館みたいな場所だったのかもしれない。帰る家があり、希望の地があると信じて疑わない人々を傍観者として眺め、しみじみと行くあてのない孤独を味わう啄木の姿が目に浮かんだ。(寺井奈緒美・歌人)
(2020-09-07 しんぶん赤旗)
http://www.jcp.or.jp/akahata/aik20/2020-09-07/20200907-007.pdf