〖 啄木の息 〗

石川啄木の魅力を追い 息づかいに触れてみたい

魂による帰郷の歌「汽車の窓 はるかに北にふるさとの山見え来れば…」啄木

f:id:takuboku_no_iki:20200605154104j:plain

鶴飼橋

いわて 物語の風景 ③

心にあり続けた郷里 盛岡・渋民

  石川啄木「一握の砂」

  • ワクチンなき当時の死病・結核で倒れる前の歌集「一握の砂」は啄木の渋民を味わうにはふさわしい。
  • 渋民の東西に対向する姫神山と秀峰岩手山の絶妙の配置。南北に大地を刻み、大河の兆しをみせる北上川。この山河をたたえないことなど考えられない。

   やはらかに柳あをめる
   北上の岸辺目に見ゆ
   泣けとごとくに

  • 石川啄木記念館の森義真館長は「啄木が(住職を罷免された)父一禎の復職運動をした経緯があって、軋轢が生じた人もいる。けれど『自然は温かく迎えてくれる』と思っていたはずだ」と解説する。
  • 「煙二」の最終8首は帰郷の歌。魂による帰還と言うべきしめくくりは、浅田次郎さんの小説「壬生義士伝終結部と相通じるように思われ感慨深い。

   汽車の窓
   はるかに北にふるさとの山見え来れば
   襟を正すも

   ふるさとの山に向ひて
   言ふことなし
   ふるさとの山はありがたきかな
    (藤田和明)

(2020-06-04 岩手日報