「詩と思想」393号 2020年4月号 手を結ぶ世界の詩人たち
世界は啄木詩歌をどう受容したか <1>
池田功
(明治大学教授、国際啄木学会会長)
- 石川啄木は、1912年に26歳と2ケ月で亡くなったが、その後も『一握の砂』と『悲しき玩具』の歌集や『呼子と口笛』の詩稿ノート等を中心に、中学・高校の国語の教科書に掲載され、また数多くの文庫になり今日においても読みつがれている。その短歌の一首や二首、また詩「飛行機」を知らない人がいないほど多くの人に知られている。
- しかし、この国民詩人と言ってもよいほど国内で読まれている啄木作品は、また海外においても翻訳を中心に読まれている。この海外における受容に関しては、それぞれの言語において部分的に調査されてきているが、まだきちんと体系的に調査され本として刊行されたことはなかった。
- もっともこれを私一人の力ですべて調査することは不可能であった。そこで 14人の研究者や翻訳者の協力を得て、池田功編『世界は啄木
短歌 をどう受容したか』(2019年10月、桜出版)として刊行することができた。
- 刊行できたのは、1989年に創立した「国際啄木学会」を通じて海外に多くの啄木研究者のネットワークがあったことからである。
○ 19の言語への翻訳
- 2019年段階で、短歌に限定しない作品の翻訳の数であるが、アジア圏では中国語、韓国語、インドネシア語、ヒンディー語、マラヤーラム語、アラビア語.トルコ語があり、また西欧圏では英語、ドイツ語、ロシア語、グルジア語、ウクライナ語、フランス語、スペイン語、ポーランド語、ポルトガル語、イタリア語、フィンランド語、そしてその他としてエスペラント語である。合計19言語ということになる。
○ 植民地下の台湾・朝鮮、そして満洲の受容
○ 海外に受容されることの特徴
「詩と思想」土曜美術社 出版販売
(つづく)