〖 啄木の息 〗

石川啄木の魅力を追い 息づかいに触れてみたい

啄木の随筆「氷屋の旗」は…

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ハゼノキ

風土計

  • 石川啄木の「氷屋の旗」という随筆は、炎暑に風もなくうなだれる旗に自らの苦悶(くもん)を重ねた一編だ。初出は1909(明治42)年というから、夏の氷が庶民にも広く出回っていた頃だろう。
  • それから20年を経ずして、米国では氷屋さんの発案でコンビニエンスストアが産声を上げている。客が欲しいものを欲しい時に提供する-という店長の考えに共鳴した会社側は、他の店にも同様の仕組みを拡大。46年に朝7時から夜11時まで、週7日営業という業態が定着した。セブン-イレブンの誕生だ。
  • 日本では74年、その1号店が東京都内にオープン。その業態が、一人の店長の問題提起を契機に変革を迫られているのは歴史の巡り合わせだろう。「脱24時間」の動きは、「身の丈」に合った働き方を志向する時代を映す面もあるだろうか。
  • 大学入試に関わり、公平性に議論がある英語民間試験を巡る文科相の「身の丈」発言は受験生に氷より冷たい。格差に鈍感な性状は、撤回で解けるものでもあるまい。

(2019-10-30 岩手日報

 

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