〈自分の机の上に、一つ済めば又(また)一つといふ風に…〉
- 〈自分の机の上に、一つ済めば又(また)一つといふ風に、後から後からと為事(しごと)(仕事)の集つて来る時ほど、私の心臓の愉快に鼓動している時はない〉〈実に好い気持ちだ。「もつと、もつと、もつと急がしくなれ」と私は思ふ〉
- 新聞社の校正係に職を得た石川啄木は、多忙ぶりを随筆「硝子(がらす)窓」に書いた。金も欲しい、本も読みたい、名声も得たい、旅もしたい…。数限りない希望はあるが〈この何にまれ一つの為事の中に没頭してあらゆる欲得を忘れた楽みには代へ難い〉
- 貧しさと結核に苦しめられた啄木。命を削って仕事や創作に打ち込んだのか、26歳で世を去った。
(2019-04-26 西日本新聞)
〈自分の机の上に、一つ済めば又(また)一つといふ風に…|【西日本新聞】