〖 啄木の息 〗

石川啄木の魅力を追い 息づかいに触れてみたい

啄木が「こころ」の悩みに打ちひしがれていたころ 漱石は…

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[ハボタン]

生老病死)行ったり来たり、揺らぐココロ 山折哲雄

  • 前回に挙げたのが、啄木の『ローマ字日記』にあらわれる、不安にみちた「ココロ(Kokoro)」の暗部の一端だった。日本語の「こころ」も「心」も、ともに英語にはならないだろうといったのだが、それはもしかすると最近になって外国人のあいだで使われだしたココロイズムのはしりだったのかもしれない。
  • 啄木が「こころ」の悩みに打ちひしがれていたころ、同じ問題を抱えこんで苦しんでいたのが漱石だった。『行人』の主人公の一郎は、妻の貞操を疑いはじめ、そのことに呪縛されのた打ち廻(まわ)る。『門』では、『行人』の一郎と同じような悩みを背負った宗助が主人公として登場する。彼は友人を裏切り、その妻御米(およね)を奪うが、そのため二人は世を忍ぶ不安のなかで暮らしている。
  • 不安と安心のあいだを行ったり来たりしている漱石が、そこにいる。そのこころの動揺が、あの『ローマ字日記』のココロにそのまま重なる。(宗教学者

(2019-02-16 朝日新聞

 

(生老病死)行ったり来たり、揺らぐココロ 山折哲雄:朝日新聞デジタル