[ツワブキ]
大地に根 百姓続けたい【農業・歌人 時田則雄】
エゾノギシギシ
- 私の農場は十勝平野のほぼ中央に位置する帯広の郊外にある。耕地面積は40㌶。コムギ、ダイズ、ナガイモ、ニンジン、タマネギなどを栽培してい る。農場からは十勝幌尻岳(ポロシリ)がよく見える。ポロシリとはアイヌ語の「ポロ」「シリ」で、「ポロ」は「大きい」、「シリ」は「山」だ。
- 石川啄木は 〈ふるさとの山に向ひて/言ふことなし/ふるさとの山はありがたきかな〉と詠んでいるが、私にとってポロシリは夢と希望をあたえてくれる山なのだ。落ち込 んでいるときは元気を取り戻してくれる山だ。
- 私は小学生のころから、大人になったら父のような百姓になろうと決めていた。それは土に触れたり、 馬と共に過ごしたりしたからなのだと思う。そのような私が就農したのは農業と他産業との所得格差の是正、選択的規模拡大、離農促進などを謳った農業基本法 が施行された6年後の1967年。当時、十勝平野は日本で最も激しい離農の嵐に吹きさらされていた。
土地を買ふは
罪かもしれぬ風吹けば
エゾノギシギシ種子ふりこぼす
- この文章のタイトルのエゾのギシギシというのはタデ科の多年草で、世界の5大雑草のひとつであり、抜いても抜いてもなかなか絶えないそのしぶとさに、わたしは親しみのようなものを抱いている。そうなのだ、エゾノギシギシは大地の同志なのだ。
(2019-01-09 農業協同組合新聞)
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