〖 啄木の息 〗

石川啄木の魅力を追い 息づかいに触れてみたい

啄木が短歌に込めた先の見えない不安。それは今の世も。


[ビルベリー]


潮流

  • 貧しさと病にさいなまれながら、人間として成長していった石川啄木。生誕130年の今年、評伝を上梓(じょうし)した日本文学研究者のドナルド・キーンさんは彼の生き方に現代性を感じるといいます。
  • 実生活を赤裸々につづったローマ字の日記。亡くなる直前までつけていた最後は「金はドンドンなくなった」。母親と自身の薬代を工面するため、下着や妻の帯まで質草にしたとあります。
  • 〈はたらけど/はたらけど猶(なほ)わが生活(くらし)楽にならざり/ぢっと手を見る〉。啄木が短歌に込めた先の見えない不安。それは今の世も。非正規雇用の拡大や低賃金、社会保障は受けられず人生設計もたてられない。改善どころか政治が若者の貧困をひろげています。
  • 啄木もまた苦しい生活の中に変化を求めました。キーンさんは「時代にとらわれない個性がある」と。そして、早世の歌人と通じる今の若者に希望を寄せています。

(2016-08-25 しんぶん赤旗