〖 啄木の息 〗

石川啄木の魅力を追い 息づかいに触れてみたい

「啄木茶房 ふしみや」に残る啄木の手紙 大分県臼杵市 <その1>

啄木文学散歩・もくじ

「君は若き女にして、我は若き男に候ひけり」と長い恋文を書いた啄木。
その相手は女を装った男だった……。


啄木エピソードとして有名なこの手紙を飾る、大分県臼杵市を訪ねた。


中央の木造三階建の家が「啄木茶房 ふしみや」。
老舗「伏見屋」が、かつてこの裏手で味噌を製造しこの場所で販売していた。







「地図の「No.9」が、「啄木茶房 ふしみや」
(「うすきのらんちまっぷ」 臼杵市観光情報協会)


臼杵市キリシタン大名としても有名な大友宗麟が築城した臼杵城のある城下町。江戸時代の町割りが、現在もそのまま残っている。江戸末期から醤油・味噌や地酒などの醸造業で発展してきた。


東に臼杵城・北に稲葉家下屋敷・西に野上弥生子文学記念館、そのほぼ真ん中あたりに「啄木茶房 ふしみや」がある。






忘れな草 啄木の女性たち』山下 多恵子 著 未知谷 版

平山良子は菅原芳子の友人として、手紙と詠草を啄木の元に届けてきた。二度目の手紙に同封されていた写真を見た日、啄木は日記に「驚いた。仲々の美人だ!」と書く。早速したためられた返信は「君。わが机の上にほゝゑみ給ふ美しき君」と甘く呼びかけられ、二人が「若き男」と「若き女」であることを意識するものとなっている。
良子は実は、良太郎という味噌の製造販売を営む老舗の息子であった。「みひかり会」という文学の会を組織し、芳子とも会を通じて親しい仲であった。
だまされていたと知ったときの啄木の気持ちは想像に難くない。しかし、幻の「良子さん」を求める気持ちが軽薄であるよりも、痛ましく思われてならない。

(つづく)
────────────────────────────────────