○土曜「考える」【北の文化】
「北の墓」を訪ねて 合田一道 ノンフィクション作家
- 『日本人の死に際・幕末維新編』(小学館)を出版したのが20年前。その時、登場人物の最期の地を歩き、いずれお墓の本をまとめようと考えた。取材を重ねるうち、北海道に関わる人物の墓にも巡り合った。『北の墓』は最初に候補を500人ほど挙げ、絞り込んでいく方法を取った。
- その人物の墓前に立つたびに、時代を生き抜いた人物の面影が甦(よみがえ)ってくる。
- 函館市の立待岬の墓地にある石川啄木の墓は「死んだら函館に眠りたい」との啄木の言葉に従い、妻が葬ったもので、観光客が絶えない。
- 『アイヌ神謡集』を編んだ知里幸恵の墓は、初め東京・雑司ケ谷霊園の金田一家の墓所にあったが、妹のミサオさんが「姉の遺骨を肉親の眠る地に戻したい」と願い、やっとかなって1975年、墓石とともに登別市の富浦墓地に改葬された。隣の十字架墓は伯母金成マツの墓である。
- NHKの朝ドラ「マッサン」の主人公、竹鶴政孝とリタの墓は余市町の美園墓地にある。妻が亡くなった時、自分の名を並べて刻み建立したもので、亡妻への思いがのぞく。
- 数多くの墓をお参りして、墓にはそれぞれの人物の思想と足跡が凝縮しているように思えてならない。
(2014-10-11 朝日新聞>北海道)
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