[ハマナス]
- 1892年夏、文豪・幸田露伴は野辺地から恐山へ向かった。その途中の横浜に至る間の光景が素晴らしい。「左に断えず海を眺めつ茫々たる原中(はらなか)を歩まするに、菖蒲(ショウブ)・〓瑰(ハマナス)(〓は「王」へんに「攵」)遠く近くに咲きにほひ、さまざまの禽(とり)の歌ふ声長閑(のど)けく…」(紀行「易心後語(えきしんこうご)」)。
- ハマナスは下北半島の海岸に広く自生する。歌人・石川啄木も1904年9月、知人にこんな手紙を書いた。「野辺地駅に下りて、秋濤(しゅうとう)白鴎を泛(うか)ぶるの浜辺に、咲き残る浜茄子(ハマナス)の紅の花を摘みつゝ…」。
(2014-07-08 東奥日報)
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