〖 啄木の息 〗

石川啄木の魅力を追い 息づかいに触れてみたい

「石川啄木の世界〜うたの原郷をたずねて」仙台文学館 <その3>

啄木文学散歩・もくじ

 
仙台文学館・開館15周年記念特別展
 石川啄木の世界〜うたの原郷をたずねて」


土井晩翠と啄木



[仙台文学館ニュース 第26号]


土井八枝(土井晩翠の妻)

1905年(明治38)5月、啄木は自らの結婚式に出席するために帰郷の途中、仙台で下車し詩人土井晩翠を訪ね歓談した。一週間後、啄木は「田舎の母が重態だが旅費がないため帰れない」という創作の手紙を晩翠宅に持たせる。妻の八枝は27歳、真面目で勤勉な女性で手元にあった15円を持ち、人力車を走らせた。旅館に着いた彼女が見たものは、友人と酒を飲み真っ赤な顔をして談笑している啄木であった。
 厚顔無恥ともいえるふるまいは、父の住職罷免により一家の生活の責任を負ったが、その現実と向き合えずにあがいている啄木の姿だった。
(『忘れな草 啄木の女性たち』山下 多恵子 著 未知谷 版 より)

……一寸でも早くお金を持って行って今夜の汽車で発たせて上げよう……と信じ切った程、その手紙はあはれに悲しく書いてありました、……石川啄木さんの室といふと直に女中が案内しました、私は重態のお母さんを案じて机にもたれてさびしい泣き顔でもして居られる様子を胸に描いて居りましたのに、その室の光景はあまりにも意外でした。二人の医専の制服の学生と三人で酒を飲んで、真赤な顔をして大声で何か面白さうに話してゐました。
(『藪柑子』土井八枝著 「特別展 展示図録」より)






仙台文学館・レストラン「杜の小径」
石川啄木の世界」展の特別メニュー(1030円 税込)

“旅路の果てに”
  もち米入りとうもろこしごはん にしんの田舎煮 じゃがいも
  かぼちゃ揚げ物 ふきのとうの味噌 アスパラとかに風味かまぼこ炒め
  わんこそば あんず ビスケット



処処を漂泊した啄木。彼とゆかりのある食材を、工夫して使ってあるそうだ。
 
(つづく)
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