〖 啄木の息 〗

石川啄木の魅力を追い 息づかいに触れてみたい

石川啄木の「未発表歌篇」と称して  寺山修司


[シダレザクラ]


BOOK asahi.com  文理悠々
 寺山修司の底抜けに青い空 [文]尾関章

  • 2月と3月、東京の世田谷文学館で開かれた「帰ってきた寺山修司展」。演劇実験室「天井桟敷」、カルメン・マキの歌、そして映画になった「書を捨てよ町へ出よう」。1960年代の反抗の季節を通り過ぎた世代にとって、寺山修司はまちがいなく大きな偶像だった。
  • クライからアカルイへ。この展覧会は僕の寺山修司観を大きく塗りかえるものとなった。寺山の核心に触れたくなって、文学館の即売コーナーでいくつかの本をぱらぱらとめくった。そのなかで彼の人物像の全容が見えてくるようなアンソロジーを1冊選んで買ったので、今回はその話をしよう。書名はずばり『寺山修司』(寺山修司著、ちくま日本文学)である。
  • エッセイについて言えば、生い立ちに触れた話や少年時代の思い出は概ね実話だろうが、フィクションも紛れ込んでいるような気がする。池内紀の巻末解説によると、石川啄木の「未発表歌篇」と称してそれらしく詠んだ偽作群もあるという。寺山の無愛想な顔の裏には、悪戯っぽい遊び心があるのだろう。この本に載った話も半分だまされたつもりになって読んだほうが、おもしろく読める。それほどにおもしろい。

(2013-04-08 BOOKasahi.com)