- 元新聞記者で校正担当も務めた経験を持つ石川啄木がこう詠んだことがある。
みすぼらしき郷里(くに)の新聞ひろげつつ、誤植ひろへり。今朝のかなしみ。
- 故郷岩手の新聞を読み、語句の間違いを見つけたやりきれなさを歌ったものだ。故郷の新聞社の経営状況を察して使った「みすぼらしき」という言葉に、啄木の思いがつまっているようにも感じる。
- ロシア人の知人と話し、メディアの話題になると、彼らはよくこうこぼす。
「記事のロシア語の間違いが多すぎる」「最近、言葉が乱れきっている」
- 昨今、言葉の乱れは日本でも叫ばれており、ロシアだけの問題ではない。啄木の句をロシア語に訳すのは難しいが、誤りを見つけたロシア人たちは啄木の嘆きに似た感情を抱いているのだと思う。(佐々木正明)
(2012-11-27 産経ニュース>外信コラム)