〖 啄木の息 〗

石川啄木の魅力を追い 息づかいに触れてみたい

呼吸すれば、胸の中にて鳴る音あり…石川啄木


[ゴヨウマツ]


啄木は平成の人々の心の玩具に

 〈呼吸(いき)すれば、/胸の中(うち)にて鳴る音あり。/凩(こがらし)よりもさびしきその音!〉。石川啄木の歌集「悲しき玩具」の最初に収められている。

  • 啄木が亡くなって今年4月で100年になる。肺結核と貧しさにあえいだ26歳だった。書きためた短歌を友人に託していた。第2詩集「悲しき玩具」は土岐哀果(善麿)らが奔走して出版された。
  • 短歌を玩具とした啄木は「五七五七七」を3行に分けて詠んだ。分け方は一通りでない。冒頭の歌は「五・七五・七七」だ。…「五・七・五七七」…「五七・五・七七」もあれば「五・七五七・七」「五七五・七・七」もある。三十一文字を自在に切り結んだ。絶望と希望が時にせめぎ合う心象風景が、かたちをなすにまかせた。結果、短歌に新しい命を与えた。
  • …共感者の間口を広げながら、啄木は平成の人々の心の玩具になっていく。

(2012-01-16 西日本新聞朝刊>コラム>春秋)