〖 啄木の息 〗

石川啄木の魅力を追い 息づかいに触れてみたい

石川啄木 著(P.28〜29)この日頃

[オオバコ]


我を愛する歌


(P.28)


   この日頃
   ひそかに胸にやどりたる悔あり
   われを笑はしめざり


   へつらひを聞けば
   腹立つわがこころ
   あまりに我を知るがかなしき


<ルビ>この日頃=このひごろ。悔=くい。腹立つ=はらだつ。


(P.29)


   知らぬ家たたき起して
   遁げ来るがおもしろかりし
   昔の恋しさ


   非凡なる人のごとくにふるまへる
   後のさびしさは
   何にかたぐへむ



<ルビ>遁げ来る=にげくる。後=のち。


《つぶやき》
「知らぬ家たたき起して 遁げ来る」は、これはもう全くピンポンダッシュそのもの。初めてこの歌に出会ったときは自分の(正しくない)過去がドッと出てきた。