〖 啄木の息 〗

石川啄木の魅力を追い 息づかいに触れてみたい

『航海者』ウィリアム・アダムス=三浦按針の生涯


【夕空】


『航海者』(上・下)

500人を超える船乗りを乗せた5隻の船団がオランダから出発した。足かけ3年後、マゼラン海峡を抜け異国ジャポンの豊後臼杵にたどりついたボロ船に乗っていたのは、わずか20数人だった。1600年、関ヶ原の戦いの直前のこと。イギリス人航海長の名はウィリアム・アダムス。彼は、後に徳川家康から旗本に取り立てられ三浦按針という日本名をもらい「青い目のサムライ」となった。


400年前の航海は凄まじい。このころの航海者は「国家に公認された海賊」であった。略奪行為を続けながら航海する。それを肯定するよりどころとして、コロンブスの判断基準があげられている。
<新大陸の原住民を見分けるには、「衣服と羞恥心」「文字と書物」「宗教と信仰」「社会の仕組み」の4つを見る。この条件の一つも満たしていない住民は野蛮人だ。殺害してよい。略奪してよい>
ジャポンの人たちは衣服をまとっていた。清潔な部屋に暮らしていた。だから殺害しない(漂着したときは死にそうで殺す力もなかったが・・)。
宗教問題、関ヶ原の戦い、造船、故郷にいる妻子。按針はこれらの事柄に苦しみながらも、高い見識と冷静さといやらしさで乗り越えていく。
小さい頃に見た横須賀「按針塚」の見事な桜を思い出しながら、一気に読んだ。