【ねこ】
『民子』
民子が忘れられない。
彼女は夜ごとチャブ台の
かたわらに座って、
一文にもならぬ私の原稿を読んでくれた。
「とてもいいわ、その調子よ」
民子の姿形年齢職業、二人の間柄までを想像してみる。
実は、浅田次郎さんが「民子」と名付けたのは猫である。この本はペットフードCMの写真集なのだ。
以前、浅田さんは「原稿は全て万年筆で手書きする」と話していた。『民子』の直筆原稿の写真も掲載されている。400字詰め原稿用紙にきっちり一枚の長さである。
人柄の表れた美しい文字に感動する。
三話載っている。どれもよいが、強いてあげれば「キャラと トモコ」が好き。詩を読むように何度も何度も読んだ。