【ヤマユリ】
「イギリス人はおかしい」
日本人ハウスキーパーが見た階級社会の素顔
- 高尾慶子 著 文春文庫
- 2001年 524円+税
著者は調理師専門学校を卒業後、祇園のホステスをしたり、イギリス人と結婚したり離婚したり、レストランで働いたり……。
やがて、映画監督リドリー・スコットのハウスキーパーになり、ロンドンの家の管理をまかされる。大邸宅の5階フロア全4室が自分用に使える。
ハウスキーパーという仕事について詳しく書かれている。ここだけでもこの本に出会えてよかった。のぞき見している気分にもなる。
超きれい好きのスコットは、屋敷中のドアノブや蛇口を毎日数時間かけてピカピカに磨かせる。「私はスポットレス(シミ一つない)が好きだ」はスコットの口癖。
ロンドン留学中の夏目漱石が貧困地区にも住んだ事実なども興味津々。
バスや地下鉄のノロマで愚図なところ、病院や警察のいい加減な態度などイギリスに大憤慨し、「地球上で真の意味の民主主義国家は日本だけであろう」とまで言っている。
他人の家庭、他国の文化を覗くという楽しみのほかに、今住んでいる国への愛を確認できる。