【夏の樹】
「啄木の短歌、賢治の短歌」盛岡タイムス連載中
盛岡大学長 望月善次
第47回 病院の廊下
- 啄木の短歌
ドア推してひと足出れば、
病人の目にはてもなき
長廊下かな。
- 賢治の短歌
朝の廊下
ふらめき行けば
目は痛し
木々のみどりとそらのひかりに
-
- 同じ、「廊下」ではあるが、啄木歌においては、病人の目には、その廊下が「はてもなき長廊下」に見えるのだという。「長廊下」は、単に物理的に長いのではなく、精神的意味を込めた「長廊下」なのである。
- 賢治歌における「廊下」は、作品の中心的素材というより、場所提示がその役割であり、中心は「目は痛し」にあると言ってよいだろう。
(2008-07-26 盛岡タイムス)