〖 啄木の息 〗

石川啄木の魅力を追い 息づかいに触れてみたい

“ふるさどの訛ァ懐(なづ)がすなぁ” 映画「東北おんばのうた」

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カワヅザクラ

あした元気になあれ

東北おんばのうた=小国綾子

  • 震災10年を前に、ドキュメンタリー映画「東北おんばのうた つなみの浜辺で」(鈴木余位監督)を見た。今月末から3日間、オンライン上映される。
  • 映画の主人公は、岩手県大船渡市に暮らす79~100歳(撮影当時)の5人の「おんば」(おばあさん、の意味)たち。詩人で埼玉大学准教授、新井高子さん(54)がインタビューした。
  • 土地言葉「ケセン語」で語られる、おんばたちの波瀾(はらん)万丈の人生に圧倒された。1933年の三陸津波、60年のチリ地震津波、そして2011年の東日本大震災。3度家を流されてもなお、94歳のおんばは「海は離れらんない。津波は毎日来ねえから」と語る。
  • 大震災後、「詩や言葉で何かできないか」と模索していた新井さん。14年、大船渡市の仮設住宅で地元のおんばたちに「先生役」になってもらい、一緒に石川啄木の短歌100首を土地言葉に訳すプロジェクトを始めた。例えば「ふるさとの訛(なまり)なつかし」は「ふるさどの訛ァ懐(なづ)がすなぁ」。作品は3年後、「東北おんば訳 石川啄木のうた」という本になり大きな話題を呼んだ。「おんばのことをもっと知りたい!」。新井さんはその後も海辺の街に通い続け、今度はそれが映画になった。
  • 映画のオンライン上映会は1500円。28日20時~3月2日21時半の間、自由に視聴できる。詳細は本屋B&B(http://bookandbeer.com/event/20210302/)。 小国綾子

(2021-02-16 毎日新聞 東京夕刊)

 

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