あした元気になあれ
東北おんばのうた=小国綾子
- 震災10年を前に、ドキュメンタリー映画「東北おんばのうた つなみの浜辺で」(鈴木余位監督)を見た。今月末から3日間、オンライン上映される。
- 土地言葉「ケセン語」で語られる、おんばたちの波瀾(はらん)万丈の人生に圧倒された。1933年の三陸大津波、60年のチリ地震津波、そして2011年の東日本大震災。3度家を流されてもなお、94歳のおんばは「海は離れらんない。津波は毎日来ねえから」と語る。
- 大震災後、「詩や言葉で何かできないか」と模索していた新井さん。14年、大船渡市の仮設住宅で地元のおんばたちに「先生役」になってもらい、一緒に石川啄木の短歌100首を土地言葉に訳すプロジェクトを始めた。例えば「ふるさとの訛(なまり)なつかし」は「ふるさどの訛ァ懐(なづ)がすなぁ」。作品は3年後、「東北おんば訳 石川啄木のうた」という本になり大きな話題を呼んだ。「おんばのことをもっと知りたい!」。新井さんはその後も海辺の街に通い続け、今度はそれが映画になった。
(2021-02-16 毎日新聞 東京夕刊)