自己責任、生産性…寅さんなら何て言うかな 俵万智さん7年ぶり歌集「未来のサイズ」
- 誰しもが日常を失ったコロナ禍も、この人が歌えば鮮やかに彩られる。
ほめかたが進化しており「カフェ飯か! オレにはもったいないレベルだな」
- 春。寮で暮らす高校2年の長男は、休校で1カ月ほど帰省した。離れて住む親子に流れた久しぶりの濃密な時間を詠んだ。
自己責任、非正規雇用、生産性 寅さんだったら何て言うかな
- 「社会がどんどん窮屈になっている。寅さんのような人が生き生きとしていられる社会の方が豊かなのではないでしょうか」。歌集に通底するのは、声高に訴えることのできないささやかな市井を全身で包み込むような肯定感だ。
制服は未来のサイズ入学のどの子もどの子も未来着ている
- 俵さんは「短歌は私のなかから生まれるのではなく、私と愛しい人とのあいだに生まれる」と言い切る。歌集タイトルにもなった歌では、成長を見越して大きな制服をまとい中学の入学式に臨む子どもたちの姿を描いた。
- かつて石川啄木以来といわれた鮮烈な口語体で、短歌界のみならず社会にまで旋風を巻き起こした。ただ、新たな短歌を切り開こうと肩肘張っていたのではなく、自らが心地よい表現を追求してきたという。
「私にとって歌集は手紙なんです」
- いろいろあるけど人生は生きるに値する。新たな「手紙」は読む者の背中をそっと、しかし確かに押してくれる。 (藤原賢吾)
(2021-01-12 西日本新聞)