〖 啄木の息 〗

石川啄木の魅力を追い 息づかいに触れてみたい

生れて初めての大風雪。雪は全く人間を脅迫して居る。-啄木-

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お天気~3分15秒~

【北海道の気象災害】第11回 啄木が おののいた連続爆弾低気圧の”脅迫”

気象予報士の国田です。

連載モノの、「忘れてはならない北海道の気象災害100」。第11回目の今回は、明治41年3月の連続低気圧による全道暴風雪です。
最初に、この暴風雪を体験した、あの歌人の言葉をごらんいただきましょう。

生れて初めての大風雪、形容も何も出来たものぢやない。雪は全く人間を脅迫して居る。

これは、1908年(明治41年)3月9日の石川啄木の日記に記された一文。
釧路新聞の記者として釧路に住んでいた啄木は、8日、猛吹雪で取材先の小学校から帰宅できなくなり、そのまま一泊。翌9日に雪による家屋倒壊と圧死者が多数出ていることを知り、庇まで達している雪や、玄関から雪のトンネルを掘ってようやく人が外に出てきている光景を目撃。日記にこのように記したのでした。

この二日後、啄木はまた暴風雪に遭遇します。

・・・今日も亦終日の大吹雪、八日程ではないけれど午后は全く交通杜絶。辛うじて社から帰つた。籠城の準備の葡萄酒を買つて。
 八日以来各地との連絡全く杜絶、全道の鉄道不通、通ずるのは電信許り。・・・

2回の暴風雪は釧路だけではなく、全道に大きな爪痕を残しました。
道防災計画(資料編)の災害年表には、死者・行方不明者が1回目の暴風雪で111名、2回目の暴風雪で214名にのぼったと記されています。

啄木も日誌に記したとおり、8日になると全道各地で線路の上に大きなふきだまりが生じ、次々と不通になっていきました。
1)行き倒れによる凍死・・・岩見沢・厚岸
2)積雪による家屋倒壊・・・釧路
3)雪崩による家屋倒壊・・・積丹木古内、室蘭、根室
4)函館・古武井鉱山の惨事
5)汽船・第11観音丸の遭難(知内)

まさかの”連続爆弾低気圧”は、北海道の陸で、海で、多くの墓標を築いていったのです。

啄木が「人間を脅迫している」と書いた暴風雪。それをもたらした急発達する低気圧。
これから100年が経過しましたが、道民は、その脅迫をはねつけられるほど強く・賢くなっているでしょうか・・・?

(2020-11-15 お天気~3分15秒~)

 

【北海道の気象災害】第11回 啄木がおののいた連続爆弾低気圧の”脅迫” - お天気~3分15秒~