【書評】
『お金本』左右社編集部編 作家たちの貧しい時代
- 本書には、文豪といわれる小説家や、その周辺の人たちのお金に関する短い文章が集められている。
- 小説家は、とにかくお金がない。夏目漱石から石川啄木、芥川龍之介、内田百●(●=間の日を月に)、太宰治、石原慎太郎に村上春樹、みんな金がない。というか、金がない時代があった。それをそれぞれの言葉で吐露している。けっこう身につまされる。
- いろんな作家たちの交流も描かれる。金田一京助は同じ下宿にいた啄木のために蔵書を売り払っている。東大生だった太宰が退学になったのを故郷に知られないために森敦と檀一雄は青森の家にうそを書いたはがきを送った。吉屋信子は田村俊子に頼まれ、菊池寛へ金を借りに行ったのだが、断られる。
- 貧しい時代があったという話を通して、みんな、どういう覚悟を持って生きていたのかを知ることができる一冊である。(左右社・2300円+税)
評・堀井憲一郎(コラムニスト)
(2019-11-24 産経新聞)
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