〖 啄木の息 〗

石川啄木の魅力を追い 息づかいに触れてみたい

 甲子園入場曲は先輩・啄木の薫陶を受けた富田砕花が作詞


[セミ]


甲子園「行進曲」、作詞は県人 球児鼓舞、歌に願い

  • 第100回全国高校野球選手権大会は5日、兵庫県西宮市の甲子園球場で開幕する。開会式の入場行進で流れる「全国中等野球大会行進曲」はファンの間でつとに名高いが、流れるのはメロディーだけのため、歌詞があることは、よく知られていない。実はこの歌詞を手掛けたのは、盛岡市出身の詩人富田砕花(さいか)=1890〜1984年=。鍛え抜いた精鋭が集うという意味の「百錬競えるこの壮美」で始まる幻の歌詞に込めた富田のエールが、時を超えてこの夏も球児たちを鼓舞する。
  • 大会開幕を告げる曲として親しまれているが、往時の新聞にも歌唱に関する記述はなく、なぜ「歌詞抜き」になったのかは不明だ。「羽搏(はばた)け 若鷹 雲裂きて」「烈烈 火燃ゆる この闘志」など球児への熱い思いとは裏腹に、いまだに多くの人は歌詞の存在を知らないまま。
  • 富田は盛岡市仁王小路の油問屋に生まれた。会計検査院に勤めながら日本大学殖民科を卒業した。文学に親しみ始めたのは10代の頃。1908(明治41)年には与謝野晶子らが主宰する新詩社へ参加し、同郷の先輩、石川啄木の薫陶を受けた。文献には病に伏し療養中の啄木を訪ねたエピソードも残る。

(2018-08-05 岩手日報


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