〖 啄木の息 〗

石川啄木の魅力を追い 息づかいに触れてみたい

 「はたらけどはたらけど」非正規雇用労働者の悲惨な実情

「派遣のくせに」「立場をわきまえろ!」非正規で働く中年男性に投げかけられる無慈悲な言葉

  • はたらけどはたらけど猶(なお)わが生活(くらし)楽にならざり、とは石川啄木の歌だが、まさにそんな立場の人は、現代の日本でも数多くいる。
  • 自身、中年になってからの再就職で苦労をして、さまざまな非正規雇用の現場を経験してきた中沢彰吾氏は、非正規雇用労働者の悲惨な実情をレポートしている(以下、中沢彰吾著『東大卒貧困ワーカー』より抜粋、引用)。
  • 山田信吾さん(54歳・仮名)のケース。山田さんは、35歳まで中小企業の管理職を務めていたが、会社が倒産。人材企業に登録し、翌日から派遣先の企業で働くことにした。特技を生かし働き、工場長代行のような業務もこなした。当然、勤務表は残業や休日出勤で真っ赤になったが、諸手当は満額支払われ、山田さんの年収は500万を超えた。
  • しかし、社長が経営効率をアップさせるため外部のコンサルタントを招き入れた。山田さんは「派遣のくせに残業が多すぎる」「重要な仕事は正社員がするものだ。派遣のあんたがやってること自体おかしい」と、残業も休日出勤も禁止され、平日は仕事が終わってから自分のスケジュール管理についての反省文を書かされ、改善策を提示するまで退社できなくなった。毎晩、終電の時間まで無意味な作文を書かされることに耐えられず、山田さんは自らその会社を去った。
  • 中沢氏は、「山田さんが、もし正社員であったなら、前記2社のいずれでも解雇されることなく、業績向上に貢献し、部長くらいに出世したのではないか」と述べた上で、非正規というだけで、優秀で実績を上げても、評価が得られないシステムの問題点を指摘している。(デイリー新潮編集部)

(2017-06-20 デイリー新潮)


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