〖 啄木の息 〗

石川啄木の魅力を追い 息づかいに触れてみたい

友がみなわれよりえらく見ゆる日よ……石川啄木

有明抄<佐賀新聞

「花とまちづくり」

  • 流浪と赤貧の果てに、26歳で逝った詩人の石川啄木(たくぼく)。ひどい窮乏生活の中でも、よく花を買う人だったらしい。<友がみなわれよりえらく見ゆる日よ 花を買ひ来て 妻としたしむ>。そんな歌を残している。
  • 先ごろ、「花で潤うまち」を目指している富山市を訪れた。中心街に路面電車を走らせて環状線も新設し、利用客が増えている。ユニークなのは指定の花店で花束を買い、市内の電車に乗った人の運賃を無料化する事業だ。降車時に運転手に花束を見せ、店でもらった無料乗車券を渡せばいい。2012年11月に始めると増え続け、昨年度は1759人の実績が上がった。
  • 乗った路面電車で花束を見つけることはできなかったが、まちの華やぎみたいなものは感じた。啄木のように妻に、母親に、そして恋人に花を贈れば、心に灯(ともしび)が生まれる。その気持ちが、ひいてはまちの余裕につながるのかもしれない。(章)

(2016-06-18 佐賀新聞