〖 啄木の息 〗

石川啄木の魅力を追い 息づかいに触れてみたい

きょう・5月2日、22歳の石川啄木が訪れた…


[カツラ]


小社会 高知新聞

  • 東京都文京区立の森鴎外記念館は、地下鉄の千駄木駅から団子坂を上り切ったところにある。真新しい記念館は立派な鉄筋コンクリートの造りだが、鴎外が暮らし始めた明治中期は木造2階建て。当時は階上から品川沖を望め、鴎外はここを「観潮楼」と名付けた。
  • 上京した22歳の石川啄木が、観潮楼を初めて訪れたのは1908(明治41)年5月2日。啄木は年長の鴎外の印象をその日の日記に書いた。「鴎外氏は、色の黒い、立派な体格の、髯(ひげ)の美しい、誰が見ても軍医総監とうなずかれる人であった」。
  • 鴎外は前年からここで定期的に歌会を開いていた。詩歌を志す若者が交流する場にもなった。その一人が啄木だった。地方出の啄木にとって、サロンは人脈を広げる格好の場となった。観潮楼に顔を出す前には歌人与謝野鉄幹、晶子夫妻とも会っている。日記には「晶子夫人と色々な事を語る」とあり、詩歌の道で生計を立てる労苦をじかに聞いた。

(2015-05-02 高知新聞>小社会)

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