〖 啄木の息 〗

石川啄木の魅力を追い 息づかいに触れてみたい

援助惜しまなかった啄木の義弟 宮崎郁雨 --新潟日報--


[アセビ]


文化の記憶 先人のふるさと (44)
  「才に心酔 援助惜しまず」

  歌人 石川啄木の義弟 宮崎郁雨(1885〜1962)

  • 「函館なる郁雨宮崎大四郎君 同国の友文学士花明金田一京助君 この集を両君に捧ぐ」
  • 石川啄木の歌集「一握の砂」は、巻頭の献辞にあるように、親友で義弟の宮崎郁雨に捧げられた。函館の文芸結社「苜蓿社(ぼくしゅくしゃ)」で1歳年下の啄木に出会い、才気に心酔した郁雨は、多くの手紙をやりとりし、互いの心中を最も知る友として、貧しさにあえいだ啄木とその妻節子への経済的、精神的な援助を惜しまなかった。
  • 郁雨は、北蒲原郡荒川村(現新発田市荒川)に生まれ、4歳までを過ごした。郁雨は恵まれない人に尽くすことを喜びとする祖父や父譲りの気質を持っていた。
  • 日本近代文学会会員の塩浦彰さんは「越後人らしい郁雨の慈悲の心は啄木一家に注がれ、啄木の才能を開花させた」と功績を語る。国際啄木学会理事の山下多恵子さんは「小児のように奔放な啄木にとって、忍耐強くおおらかで誠実な郁雨は、自分のすべてを受け入れてくれる存在だった」という。
  • 郁雨と啄木。美しく尊い2人の友情は、深い共感を伴いながらこれからも語り継がれることだろう。

(2015-01-19 新潟日報
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