〖 啄木の息 〗

石川啄木の魅力を追い 息づかいに触れてみたい

歌を本棚に奉らず、日常のなかで思い出し口ずさもう…永田和宏


[タケニグサ]


「100年後に遺す歌」永田和宏  日本経済新聞

  • 一年あまり前に『近代秀歌』(岩波新書)という新書を出した。
  • 近代の歌人三一名をとりあげ、その代表歌(と、私が思うもの)一〇〇首について、鑑賞を附(ふ)したものである。斎藤茂吉の十一首を筆頭に、与謝野晶子石川啄木九首、若山牧水八首などと続く。
  • この本では、私は珍しく読者へのかなり強いメッセージを意識していた。帯には「日本人ならこれだけは知っておきたい 近代の歌一〇〇首」と刷られているが、ここに第一のメッセージは集約されている。本当は、私の思いはもう少し過激で、「知っておきたい」の部分は、「知らなければ恥だ」という気分だったのだが、あまりに挑戦的すぎて却下。
  • 『近代秀歌』は、今春、六つの大学で入学試験問題に採用されたのだそうだ。驚くとともに、素直にうれしかった。大学生になったばかりの学生に読んでほしいという強い思いがあったからである。
  • 『近代秀歌』が本になってから気づいたもう一つのメッセージは、歌を本棚に奉っておくのではなく、日常のなかで思い出してやろう、口ずさもうというものであった。「本棚から歌を解放しよう」と言ってもいい。
  • そんな意味を込めて、『近代秀歌』の続編『現代秀歌』を出すべく、いま仕上げの段階に入っている。今回は、一〇〇人の歌人の、一〇〇首の歌を取り上げて、解説鑑賞をすることになった。

(2014-07-27 日本経済新聞

────────────────────────────────────