正平調 神戸新聞 2014-07-11
- 同じ親とはいえ父親は母親にはかなわない。4年前に亡くなった河野裕子さんの歌を読むたび、思わされる。「しつかりと飯を食はせて陽(ひ)にあてしふとんにくるみて寝かす仕合(しあわ)せ」。
- その少年は12歳、中学1年生だった。まだまだしっかりと食べさせ、たっぷりと寝かせる年頃である。なのに…。長野県で起きた土石流災害で、自宅ごと土砂にのみ込まれ、命を落とした。
- 「ふるさとの山に向(むか)ひて言ふことなしふるさとの山はありがたきかな」。啄木が歌った、ありがたいふるさとの自然が突如、表情を変えて、人々に襲いかかる。わずかな間に、急激に量を増した雨がそうさせた。
(2014-07-11 神戸新聞)
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