〖 啄木の息 〗

石川啄木の魅力を追い 息づかいに触れてみたい

「啄木WEEK」近藤典彦氏の講演 啄木行事レポート

《関連イベントに参加しての私的レポート》



[近藤典彦 氏]


石川啄木WEEK」東京・八重洲ブックセンター

12月15日
講演「『一握の砂』 その底知れぬ魅力を探る」近藤典彦

◎ 井上ひさし氏の石川啄木
「嘘つき、甘ちゃん、借金王、生活破綻者、傍迷惑、漁色家、お道化者、天下気取り、・・・石川啄木という人物は、じつにさまざまな不名誉きわまりない異名の持主です」
これ全部本当。嘘ひとつもない。井上ひさしさん以外、だれもこんなこと書けない。これは、15歳から23歳までの啄木のこと。
1909年(明治42)10月、啄木は「回心」する。ガラッと根底から生まれ変わる。『一握の砂』『悲しき玩具』『呼子と口笛』・・、これらはみんな「回心」してから書いた。
「…甘ったれて現実を直視することを怠っていた啄木の目が澄みはじめ、鋭くなって「実人生の白兵戦」がはっきりと見えてきます」「二十一世紀も間近い、このお先真っ暗な時代に生きる私たちが今直面を強いられている諸問題に、彼は何十年も前に気づいていたのでした」
今、まさにそうなっている。
石川啄木の歌はどの一首を読んでも、みんな自分の心に思い当たるものがある。「ああ、そうそう」「そんなことあった」と、啄木の歌の中に自分を見る。

◎ 草壁焔太氏の石川啄木
「啄木の歌は、その奥底を見れば、「意識歌」といってもよいものかもしれない。放心、抒情などによってかくされているが、ほかのいかなるうたびとよりも、意識世界を深く深く掘りさげ、自分の人生、社会、日常の瞬間を鋭くとらえている」


   いのちなき砂のかなしさよ
   さらさらと
   握れば指のあひだより落つ

草壁さんは6歳のとき満州にいた。そのころ、お父さんがつぶやいた歌が「いのちなき」の歌だった。これに感動した彼はその夜寝られなかった。「ぼくもこういう歌をつくる人になりたい」と、志をたてた。
歌の解釈はこうなる。啄木は砂時計をイメージした。時間は見ることができない。砂時計は、砂がシューッと落ちるのが目に見える。啄木は過ぎていく時間を惜しんでいるが、砂はいのちないからただ時間の経過だけを見せてくれる。だから「いのちない砂のかなしさ」になる。6歳の少年をつかまえてしまうような見事な表現の歌。

◎ 『一握の砂』の魅力
啄木の歌はひとに勇気を与える。元気を与える。読んでいるうちにじわっと力が出て来る。彼は「上を向いて歩いた」のではなく、「上を向いて全力疾走」した。エネルギッシュに疾走し、倒れて傷だらけになっても、いいことしか考えない。ただただ上を見ている。
啄木は生涯希望を持ち続けた。現実を踏まえた理想を求め続けた。啄木の歌はすごい苦労の中からよりよくと願って生み出された。いつも希望を持ちながら歌った。その啄木の本性が歌にあらわれている。これが、啄木の歌の魅力であり秘密かなとおもう。


[石川啄木関連 書籍販売]




[司会 佐藤勝 氏]




[絵と彫刻に囲まれた会場]


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石川啄木WEEK」
明日からの講演会プログラム
 開始時間
  昼の部 14:00(約90分)
  夜の部 18:30(約90分)


◎12月18日(火)
・昼 講演「書誌研究から見た啄木図書の面白さ〜近刊を中心に〜」
   佐藤 勝 (国際啄木学会理事・「湘南啄木文庫」主宰)
・夜 講演「いい歌にはわけがある」
   河野有時 (国際啄木学会東京支部長・東京都立産業技術高等専門学校准教授)
◎12月19日(水)
・昼 講演「啄木『ローマ字日記』を読む」
   西連寺成子 (国際啄木学会理事・明治大学兼任講師)
◎12月20日(木)
・昼 講演「啄木文学の魅力を語る」
   池田 功 (国際啄木学会副会長・明治大学教授)
・夜 エンディング・トーク「なみだは重きものにしあるかな」
   菅原研洲・山田武秋・三浦千波・伊東明子・伊藤馨一


○会場
 ・八重洲ブックセンター本店 8階ギャラリー
   JR東京駅八重洲南口 徒歩3分
   東京メトロ銀座線京橋駅7番出口(明治屋出口) 徒歩4分