- もう大昔のことだ。記者生活の1年目。日曜出勤で「出稼者大会」の取材に行かされた。会場は千人規模の参加者でいっぱい。休憩時間のロビーは、久しぶりに会った同郷仲間のお国なまりが飛び交った。その光景からある短歌が頭に浮かび、社に帰ってデスクに「記事に入れたい」と言った。デスクは「表記を正確にしろよ」と注文をつけただけでOKしてくれた。
ふるさとの訛なつかし 停車場の人ごみの中に そを聴きにゆく
- 出稿された記事は部内でちょっとした話題になり、ある先輩記者に「キザだ」と言われた。そのことが気になって別の先輩に話すと「おまえ、バカだな。この業界ではキザは褒め言葉なんだ」と笑われた。いい時代だった。
- 啄木は大逆事件に異常な関心を持っていた。友人で事件の弁護人だった平出修から幸徳秋水の陳述書を借り出し、夜通し筆写している。その鬼気迫る姿が目に浮かぶ。今年で5年目になる大学の文章実習の授業では、毎年、啄木の短歌と「時代閉塞の現状」を紹介している。(47NEWS編集部 小池新)
(2012-04-23 47NEWS)