2012-04-13 越山若水 啄木 広場 「あともう何本もすうわけではないからと 禁煙のうやむやに 年改まる」。三行歌の先駆者、土岐善麿は94歳まで長生きした人だが、晩年に禁煙を試みたようだ。 「我は今のこる最後の一本の煙草(たばこ)を把(と)りてつくづくと見る」。善麿の友人、石川啄木の短歌である。ただ禁煙というより、貧乏をかこった惨めさを嘆いた歌らしい。 「空家(あきや)に入り煙草のみたることありきあはれただ一人居たきばかりに」。啄木は稼業の不振に悩んで煙草に火を付けた……。 (2012-04-13 福井新聞)