〖 啄木の息 〗

石川啄木の魅力を追い 息づかいに触れてみたい

風土計

  • 「石川は遂に死んだ」。直接的表現で始まるこの文章は、啄木の歌集「悲しき玩具」のあとがき。刊行を委ねられた友人の土岐哀果(善麿)が記した。
  • 「眼(め)閉づれど、/心にうかぶ何もなし。/ さびしくも、また、眼をあけるかな。」。歌集の2番目に掲載されているが、これが最後に作った歌。歌稿のノートに挟まれた紙片に、もう一首とともに記されていた。
  • 何かをしたくても思い浮かばない、もどかしさを感じさせる。句読点、一字下げは歌集後半にみられる形態だ。国際啄木学会事務局長の森義真さんは「3行書きの可能性を広げる試み」と解説する。長く生きられたなら、どんな世界をつくっただろうか。
  • 「一握の砂」と併せて読み継がれる啄木の歌。誰もが親しめる。「自分の気持ちに即した歌を探してみる。すると必ずある。生活の合間や節々をうまく表現しているのが啄木だから」と森さん。
  • 鋭い評論も残した。「時代閉塞(へいそく)の現状」は説く。明日の考察こそなすべき唯一と。きょう没後100年の啄木忌。今また閉塞の中、託された言葉をかみしめる。

(2012-04-13 岩手日報