〖 啄木の息 〗

石川啄木の魅力を追い 息づかいに触れてみたい

小社会

  • 啄木は嘘つきでもあった。26歳で早世したとき、与謝野晶子が新聞に寄せた9首の哀悼歌に、〈いろいろに入り交りたる心より君は尊とし嘘は云(い)えども〉などと「啄木の嘘」を詠んだ歌が二つ。切ない思いの一方、冷めたまなざしも感じられる。
  • 新聞社の校正係の職は薄給ではなかったとの見方もあるが、いつもぴいぴいの暮らし。そんな中から代表作の歌集「一握の砂」は生まれた。
  • 親交のあった土岐善麿の尽力で世に出たのは死後8年たってから。それがなければ、格差社会の広がりの中で〈はたらけど はたらけど猶(なほ)わが生活(くらし)楽にならざり ぢつと手を見る〉を思い浮かべることはなかったかもしれない。

(2012-04-13 高知新聞>小社会)