初めての俳句・短歌
忘れ来し煙草を思ふ
ゆけどゆけど
山なほ遠き雪の野の汽車
- 北海道の野を走る列車に揺られながら、駅に忘れてきたタバコを思い出す。そのタバコは別れてきた小樽の思い出が詰まっているのだろう。真冬の北海道の原野を車窓に見つめる啄木のあてどない心情がよく出ている歌。
さいはての駅に下り立ち
雪あかり
さびしき町にあゆみ入りにき
- 釧路に到着したときの印象を描いた。到着は夜だったのだろう。闇をほんのり照らす雪明りを見ながら、啄木は遠いところまでやってきてしまったという感慨に囚われる。
- 啄木の3行書きの短歌は、今もなお、多くの人々に愛されている。20代の若者らしい、孤独感と感傷が100年後の私たちの心にもダイレクトに伝わってくる。(大辻 隆弘)
(2011-12-17 日本経済新聞>アート&エンタ>初めての俳句・短歌)