〖 啄木の息 〗

石川啄木の魅力を追い 息づかいに触れてみたい

「ふるさとの山に向ひて 言ふことなし」啄木

特集ワイド 東日本大震災 作家・新井満さんの祈り

  • 千の風になって」などで知られる作家の新井満さんが、東日本大震災で被災した人々に向けて一編を書き、夕刊編集部に寄せた。「雲の上の青い空」。
  • 新井さんは高校3年生だった1964年、新潟地震に遭遇した。「一生分の恐怖を味わいました」。
  • 絶望しそうになったとき、新井さんは坂口安吾の碑がある新潟海岸に立ち、佐渡島の向こうに沈んでいく美しい夕日を眺めた。そして、石川啄木の「ふるさとの山に向ひて 言ふことなし ふるさとの山はありがたきかな」という詩を繰り返し読んだ。
  • 「いちばん苦しい時に人の心を癒やすものは、大自然の美しさと芸術表現の感動ではないか」。
  • そして今。発生直後は一日一日を生きることに必死だったが、時とともに「自分だけが生き残ってしまった」「これから先、どう生きれば……」などと罪悪感や絶望にさいなまれる被災者は多い。「だからこそ、希望という心のパンが必要になる」
  • 詩は、精神の命を救う「心のパン」だから。

(2011-04-13 毎日新聞