編集手帳 -読売新聞-
- 夜行寝台の列車に乗っていて途中で目が覚めるのは、停車して静まり返ったときである(英文学者の外山滋比古さんの随筆)。
- 旅に限るまい。失言、陳謝、失言、陳謝…菅運転士・仙谷車掌コンビが走らす列車の絶え間ない振動と騒音に、悲しいかな、慣らされた気味がなくもない。
- 石川啄木に一首がある。〈雨に濡れし夜汽車の窓に/映りたる/山間(やまあい)の町のともしびの色〉。にじむ灯のもとには、人の営みがある。ガタンゴトンに神経を麻痺させて、もっと切実な、車窓の光景を見逃すまい。
(2010-11-24 読売新聞>編集手帳)